Team

Profile

中野 智裕
Principal
九州大学大学院総合理工学府卒業後、2006年にマツダへ新卒入社。北米向けセダン(Mazda6)の商品収益管理業務に従事。2009年にミシガン州のマツダとフォードのJV工場へ出向し、経営企画としてコスト企画管理等を担当。2012年にセールスフォース日本法人に転職し、Finance & Strategy担当としてSaaS事業および組織の急成長に携わる。2016年に同社投資先のチームスピリットに入社し、広範なコーポレート業務およびIPO/IR実務を担当し、上場後に取締役就任。2021年にHacobu入社。執行役員経営管理本部長としてコーポレート業務やガバナンス構築に従事。2022年にDNX Capitalに参画。東京大学Executive Management Program修了(第32期)

Interview

  • 課題に生きざまを重ねる起業家と 真のパートナーシップを築く
  • 自分の手で出来ることを 増やしたかった 私は製造業(マツダ)、外資IT(セールスフォース)、SaaSスタートアップ(チームスピリット、Hacobu)と、異なる世界を経てきました。 マツダでは北米セダンの商品PLのコントローラーでした。販売計画から製造原価、投資、商物流、為替、会計、税務まで、商品PLの構成要素となるあらゆる数字とオペレーションを、様々な部署の方と一緒に地道に改善する中で、管理会計を身体知として学び、一つ一つの数字や仕訳の先にある、血の通った人と実務を感じられるようになりました。ヒト、モノ、カネのダイナミクスに浸かったことは、ソフトウェアに限らず多様なビジネスモデルを理解する基礎になっており、起業家のビジネスモデルを最初に紐解く助けになっています。 セールスフォースに転職し、製造業と違ってSaaSのPLは驚くほどシンプルで、ビジネスモデルの洗練に驚きました。Wall Streetのコンセンサスへの着地に向けて、事業計画の作成とコントロールを担い、グローバルなチームでビジネスに伴走していました。新たなカテゴリーを切り拓く企業の視座と規律あるオペレーションに身を投じたのは、自分のベンチマークになっています。優れたSaaS企業を作るためには自分たち自身が優れたSaaSユーザーであることも重要だと考えます。世界で評価されている多くのSaaSをユーザーとして触れた経験は、起業家とプロダクトやユーザー体験を議論する土台になっています。 その後、当時は国内に上場SaaS企業がほとんどない中で、上場前後のスタートアップで、コーポレート領域のあらゆる業務を実行レイヤーからマネジメントまで経験しました。当時のスタートアップでの実務経験なくしてはスタートアップマインドセットを理解するのは難しかったかもしれませんし、フィデューシャリー・デューティの緊張感を身をもって経験したことも、あらためてスタートアップのガバナンスを考える上でも大きな意味がありました。
  • その課題を 手触りをもって理解したい DNXに参画してから支援してきた起業家には、業界の中で深く根を張ったペインに向き合う方が少なくありません。私が受け止めたいのは、市場規模やビジネスモデルだけでなく、その領域におけるペインの深さであり、起業家がそのペインにどれだけ覚悟をもって取り組もうとしているか、その迫力を感じたいです。業界の構造を現場の目線をもって変えていく起業家に惹かれることが多いです。 事業会社で実務に向き合ってきた人間として、業界内部の構造的な不具合や、慣習として放置されてきた論点を、当事者の側から理解できることがあります。だからこそ、起業家が向き合うペインの輪郭を、外からロジックで評価するのではなく、自分の経験と重ねて手触りを感じる場面が少なくありません。 一方で、SaaSというアセットクラスと10年あまり向かい合ってきましたが、市況も技術環境も変化し続けています。AIをはじめ事業前提の変化は、自分の仮説の棚卸しとアップデートを要求しています。現実に目の前に立ちはだかる個別具体的な顧客ペインに向かいつつも、それがペインである前提や周辺領域の行く末について、起業家との問いと対話を続けていきたいです。
  • 起業家の長い旅路に 手を添えていたい ご縁があって投資させていただいた起業家の中には、当時、市場ではまだ認知が薄く、業界の中では地味に映る課題に挑む方が少なくありませんでした。そうした起業家から「自分のやろうとしていることを理解してくれる投資家にようやく出会えた」と言ってもらえたときこそ、自分がVCにいる意味があったと実感します。スポットライトが当たる前の段階で、共同投資家のシンジケーションを組み、顧客や仲間となる候補者にまで、起業家への共感を広げていけたとき、起業家のポテンシャルがようやく世の中に届きはじめる手応えを感じます。 起業家との対話だけでなく、投資先の現場のメンバーや社外の協力者まで、役職や立場を問わず議論できる関係になっていくとき、特別な嬉しさがあります。スタートアップ企業側で同じ論点を実行レイヤーから経験してきた人間として、相手がいま向き合っている問いに、こちらから先回りで論点を持ち込める。「次にこの論点が立ち上がってくる」「この順番で手をつければ全体が崩れない」──そうした感覚を共有しながら、一緒に組み立てていく時間は、自分にとっても大事にしたい時間です。 私たちと投資先の関係は長く続きます。だからこそ、起業家への価値提供は、私一人で完結するものでもありません。DNXは異なる背景を持つメンバーで構成されたチームで、私が事業会社の経験から持ち出せるものは、そのうちの一つに過ぎない。チームの中の一つのピースとして、起業家の長い旅路を、微力ながら手助けし続けたいと思います。